建物の調査方法
耐震診断を行う際には、元々設計した時の設計図や計算書の確認だけでなく、実際の建物の調査も行います。建物の経年劣化は実際に確認しないと分かりませんし、時には設計図と実際の建物が違うなんてこともあります。
この記事では耐震診断の調査内容について説明していきます。
耐震診断の調査は大きく、予備調査と本調査に分けられます。
予備調査は、主に設計図などから建物の基本的な情報を調査して、耐震診断基準が適用できるか、現地調査の際にどのような情報が必要となるかを把握するために行います。
具体的には建物の名称、所在地、用途、設計者、施工者、建物規模、竣工年などを調べます。特に耐震性に関する法律は昭和56年に大きく変わっていますので、竣工年が昭和56年以前か以降かは大きく耐震性能に影響します。
設計図などの資料がきちんと残っている場合は資料を確認すればこれらの情報はわかりますが、資料が残っていない場合はどうすればいいでしょうか。資料が残っていない場合は実際の建物を計測して柱などの寸法を調査します。しかし、耐震診断を行うのに充分な資料が揃っていない場合には診断が行えないこともあります。
本調査は、実際の建物を現地で調査を行い、後に行う構造計算に必要な情報を得るために行います。
具体的には以下の調査を行います。
①履歴調査
予備調査の内容を現地で確認します。
②外観調査
建物の外壁などにひび割れが発生していないか、鉄筋が表面に表れていないか、建物が傾いていないかなどを目視により調査します。また、建物だけでなく、敷地の周辺にがけや擁壁があるか、敷地に傾斜があるかなどについても調査を行います。
③コンクリート材料の調査
設計図があれば設計した際のコンクリートの強度はわかります。しかし、実際の強度は調べてみないとわかりません。老朽化が進んだ建物では強度が低下していることがあるかもしれません。そこで、実際の建物の壁などからコンクリートコアと呼ばれる円柱の試験体を採取して強度試験などを行います。コンクリートの強度は箇所によりばらつきがあるため、各階、各竣工時期ごとに3本以上採取することを原則とします。
④現況と設計図との比較
実際の建物の状況と設計図の内容に違いがないか確認を行います。長い間使われていた建物は、間仕切りの位置が変更されていたり、設計したときと異なる用途で使われていることがあります。また、窓やドアの位置、大きさが設計図と実際の建物で異なることもあります。開口部の大きさは耐震性能に大きく影響しますので、よく確認することが必要です。
⑤追加調査の要否の確認
本調査による情報だけでは耐震診断を行うのに十分でないとなった場合には追加調査を行います。例えば、想定より建物が老朽化しており、より詳細に劣化状況を把握する必要がある場合などです。
耐震診断は、構造計算で建物の耐震性能を求めますが、計算だけ行うわけではありません。実際の建物がどのような状態かしっかりと把握することが、とても重要です。耐震診断を行う際は、計算だけなく、調査も信頼できる専門家に行ってもらいましょう。