RC建物の耐震診断とは

今年は東京オリンピックがあり、様々な会場で競技が行われました。その会場の一つに国立代々木競技場があります。1964年の東京オリンピックでも使用されたレガシーです。50年以上の時を経て再度使用するということで、耐震診断、耐震補強が行われました。適切な診断、補強が行えれば、まだまだ使用できるということがわかります。

ところで皆様は住われているご自宅の耐震性についてご存知でしょうか。耐震診断という言葉を見たり聞いたりしたことはあると思いますが、具体的にどのようなことを行うのかまでは知らない方が多いと思います。

この記事では多くのマンション等で採用されている鉄筋コンクリート造(以下RC造)建物の耐震診断の方法を簡単に説明していきます。

耐震診断では最終的にIs値という数値を求め、この値が大きいほど建物の耐震性が優れていることとなります。

Is値とは構造耐震指標といい、建物の耐震性能を表す指標です。Is値は建物の「強さ(硬さ)」、「粘り強さ」、「バランスの良さ」、「老朽具合」により求めます。

Is=C×F×SD×T

C(強度指標):建物の強さ(硬さ)を表します。例えば、マンションのような壁のたくさんある建物は硬く、地震が起きてもぐっと踏ん張ることで地震に耐えます。一般的には、壁がたくさんあり、大きな柱のある建物ほど高い強度指標となります。

F(靭性指標):建物の粘り強さを表します。例えば、商業ビルのようなガラス張りで間仕切りの少ない大空間の建物は、変形しやすいため、地震が起きると柳のように力を受け流すことができます。一般的には、壁が少なく、鉄筋がたくさん入った柱のある建物ほど高い靭性指標となります。

SD(形状指標):建物のバランスの良さを表します。例えば、L字型の建物は真四角の建物と比べるとバランスが悪いため、地震の際にねじれてしまうなど、予期せぬ力のかかり方をすることがあります。そこで、バランスの悪い建物に対してはペナルティを課しています。

T(経年指標):建物の老朽具合を表します。同じ建物であっても新しい建物と、古く老朽化が進んでいる建物では耐震性能は異なります。築年数や、建物調査を行いひび割れが発生していないかなどを確かめます。老朽化している建物にはペナルティが課されます。

「バランスの良さ」と「老朽具合」を除けば、建物の耐震性能は「強さ(硬さ)」と「粘り強さ」の掛け算で決まります。硬く、剛強な建物は当然耐震性能は高くなりますが、そのような建物でなくとも、柔よく剛を制すような柔らかい建物であれば充分地震に耐えることができます。硬さと粘り強さのバランスが重要です。

このように求めたIs値が一般的には0.6以上であれば、十分な耐震性能を持つ建物であり、耐震補強は不要と判断されます。この0.6という数値は過去の地震の被害例との関係から決められています。

皆様の住われている建物のIs値はどの程度でしょうか?大地震はいつ起こるかわかりません。簡易に求めることができる一次診断もありますので、ぜひ一度確認してみることをおすすめします。

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